ある日、ストンと腑に落ちたのです。

どんなに頑張って考えても、想像しても、この世には、理解できないことがあると。

そう納得できてからは、なるべく、理解できずに腹が立つ事柄からは、距離を置いて暮らそうとしています。

普賢菩薩
切り絵「普賢菩薩」

とはいえ、避けようとしても、避けられないこともあり、自分の意に反したことは起こります。

今日は、避けられずに虫のすかない人たちと関わったので、ちょっと虫の居所が悪いです。

常に仏さまのような穏やかな顔でいたいものですが、まだまだ修行が足りませんね。

虫といえば、昨日の記事でも、「疝気の虫」が登場しました。

虫…。

「虫がいい、虫酸が走る、虫が知らせる、虫がつく、本の虫」など、今思いつくものだけでも、けっこうあります。

昨日の「腰痛の虫」を引用した「戦国時代のハラノムシ」という本には、「針聞書」の63匹の虫たちが収録されています。

戦国時代のハラノムシ

人の中に虫がいるという考えが、いつから言われるようになったのかと調べてみました。

すると、人間が生まれついた時から、3匹の「上尸(じょうし)・中尸(ちゅうし)・下尸(げし)」という三尸虫(さんしちゅう)がからだに住みついているという、中国の道教の思想から来ているらしいとわかりました。

にいる「上尸」は、目を悪くしたり、しわを作ったり、首から上の病気を引き起こす。
にいる「中尸」は、食欲を強くしたり、臓器の病気を引き起こす。
にいる「下尸」は、淫欲を起こさせたり、腰から下の病気を引き起こす。

60日に一回訪れる庚申の日の夜、こちらが寝ている間に抜け出す三尸虫たち。人間が悪さをすると、この日に天帝に報告して、その分寿命が短くされるという教えです。

「善をなし悪をやめ、庚申の夜には、香華や百味の飲食を供え、真言を唱えて仏を念じて眠らない。さらに、六度の庚申の夜を無事に勤めれば、願いが成就する。」

という庚申信仰は、奈良時代に日本に伝わり、貴族の間で流行し、その後、日本中で広がりました。

奈良時代から戦国時代、700年の間に、日本では、ずいぶん五臓六腑に巣くう虫が増えていったみたいです。

戦国時代のハラノムシより

ハラノムシにしても、妖怪にしても、昔の人の想像力には驚かされます。

そうすることで、目には見えないものたちと戦った時代だったからかも知れません。

科学や技術が発達して、目に見えるものが増えてきましたが、私たちが足りなくなってきたのは、目に見えないものを想像する力じゃないかと思います。

目に見えるもの、お金や権力に群がる人ばかりが増え、かすかな虫の息を感じ取れない人たちが増えてしまったようです。

そんな避けて通りたい人たちが私の所にやってきて、どうやら私の腹の虫がおさまらなかったようです。

この記事を書くにあたって、2020年の庚申の日を調べてみて驚きました。

明日(7月16日)が、ちょうど庚申の日。

三尸虫も、彼らを見て、苦虫を噛み潰したような顔をしているだろうと想像し、腹の虫をおさめようと思います。

それでは、またね。

チョークディナカー!